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ロシア、ウクライナで「戦争の実験場」再現か シリアでの戦術に酷似
2022年03月17日11時28分
【AFP=時事】都市の包囲や民間インフラへの砲撃、市民を退避させる「人道回廊」の設置──。ウクライナ侵攻でロシアが採用している戦術は、シリア内戦に軍事介入して反体制派を弱体化させるために試し、微調整を加えてきた手法に酷似している。(写真はシリア首都ダマスカスに掲示された、バッシャール・アサド大統領とロシアのウラジーミル・プーチン大統領の写真)
ただし、作戦計画は異なるものとなる。シリアの反体制派武装勢力には、軍事力も国際社会からの広範な支援もなかった。西側の支援を受けたウクライナ軍は、いずれの点も大きく上回っていると、アナリストは指摘する。
ロシアは2015年、バッシャール・アサド政権を支援するためにシリア内戦に介入。10年超に及ぶ内戦における決定的な戦いで、政権側に勝利をもたらしてきた。
ウクライナでも、ウラジーミル・プーチン大統領が先月24日に侵攻を命じて以降、大規模なロシア軍部隊が進攻。都市中心部に砲撃を加えたり、多数の民間人に避難を強いたりし、国際社会から激しい非難の声が上がった。
ロシア軍が民間人居住区を標的にしていることを示す多くの証拠があるにもかかわらず、ロシア側はこれを否定。これに対し、西側主要国や人権団体は、戦争犯罪の可能性があると糾弾している。
フランス軍事筋はAFPに「シリアは小さな舞台だった」とし、ロシアのウクライナ侵攻で特筆すべきは「規模の違い」だと語った。
ただロシア軍は、シリアで複数の兵器体系の試験を実施し、重要な実戦経験を積んだ。ウクライナで採用されている戦術の多くも、シリアでの経験から導き出されたものだ。
アナリストのファブリス・バランシュ氏は「ロシアにとってシリアは兵士や装備の実験場だ」と解説する。
■恐怖をあおる戦術
人権団体は、アサド政権が反体制派を要衝から排除するため、民間人居住区を包囲したり、インフラを爆撃したりするのをロシアが支援してきたと批判している。
バランシュ氏は、アサド政権のてこ入れに向け、経済の中心地である北部アレッポや首都ダマスカス周辺の反体制派支配地域を含む「大都市を制圧することが、ロシアの初期の目標だった」と分析する。
同氏によると、ロシア軍はウクライナでも首都キエフやハリコフ、オデッサを含む重要都市に向けて進攻し、シリアと同じようなパターンを踏襲したが、それにはウクライナの統治体制の正統性を奪う狙いがあった。
病院や学校を標的とした無差別爆撃も、民間人の「恐怖をあおる」ためにシリアで用いた戦術と同じだと、同氏はみている。
ソーシャルメディアに投稿された、戦争の記録を保存する非営利団体「シリアン・アーカイブ」によると、シリアでは2011年以降、ロシア軍やアサド政権によって医療施設少なくとも270か所が攻撃された。人権団体によれば、2016年のアレッポへの攻勢などで、学校や市場も標的となった。
バランシュ氏は「ロシアは軍事的な標的を爆撃した後、民間人の生活を壊して退避に追い込もうと、医療やエネルギー関連のインフラを次に狙う」と指摘。「市民が去れば、軍の進攻は容易になる」と語った。
国際人権団体のヒューマン・ライツ・ウオッチとアムネスティ・インターナショナルは先月、ロシア軍がハリコフで病院や学校に対してクラスター弾を使用したと非難した。
今月9日には、南東部の港湾都市マリウポリにある小児科・産婦人科病院を空爆したとされる。ウクライナ政府によると、少女を含む3人が死亡した。これを受けて国際的に非難の声が高まり、主要国はロシアが残虐行為を働いていると糾弾した。
■異なる戦場
もう一つ類似する戦術として、包囲した都市からの市民を退避させるための「人道回廊」が挙げられる。専門家によると、これもシリアで試された戦術であり、包囲された反体制派支配地域から国際的な保障のないまま避難する民間人は、時に死傷したり、拘束されたりする。
シリアとは状況が異なる点もある。米首都ワシントンにあるシンクタンク、ニューラインズ研究所のニコラス・ヘラス氏は「シリアでロシア軍は、親アサド派部隊に助言したり、援護したりする際、空軍力や特殊部隊に主に依存していた」のに対し、「ウクライナではロシア軍自体が(主要な)戦闘部隊になっている」と解説する。
またヘラス氏は、相手の戦闘能力という面でも大きな違いがあると指摘する。ロシア軍は現在、対空砲や対戦車砲などを西側諸国から供与されたウクライナ軍と戦っているが、「ロシア軍が完全に優勢だったシリアでは、マイナーリーグに参戦したようなものだった」と話した。
とはいえ、ロシアの有力シンクタンク、ロシア外交問題評議会のアントン・マルダソフ客員研究員によれば、ロシアは兵器体系についての感覚を磨いてきた。
マルダソフ氏は「(ロシア軍は)シリアで使用した地対空の精密誘導兵器の欠点を修正した」とし、「ウクライナでは精密誘導兵器を積極的かつ正確に使用している」と述べた。【翻訳編集AFPBBNews】
〔AFP=時事〕
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